切削油のトラブルシューティング!製造現場の困りごと15選と解決策

機械加工の現場において、切削油剤は加工精度、工具寿命、生産効率に直結する重要な要素です。しかし、その管理や選定を誤ると、様々なトラブルを引き起こす原因ともなり得ます。 「加工精度が安定しない」「工具の摩耗が早い」「切りくずがうまく処理できない」「機械やワークが錆びてしまう」「切削油が泡立って困る」…これらは、多くの現場担当者様が日々直面している悩みではないでしょうか。この記事では、私たちサンワケミカルが長年培ってきた知見に基づき、機械加工の現場でよく遭遇する切削油に関する以下の15の代表的な困りごと(トラブル)を取り上げ、それぞれについて一問一答形式で、その原因と具体的な解決策を徹底解説します。
本記事で取り上げる製造加工現場15の困りごと
- 被削材が狙いの寸法より大きく加工される(オーバーサイズ)
- 被削材が狙いの寸法より小さく加工される(アンダーサイズ)
- 被削材の加工寸法が安定しない(寸法ばらつき)
- 被削材の加工面にむしれやざらつきが出る
- 被削材の加工面に傷やびびりマークが付く
- 被削材の加工面の光沢が良くない
- 工具の摩耗が異常に早い(フランク摩耗、クレータ摩耗など)
- 工具の刃先に構成刃先が生成・脱落しやすい
- 切りくずが工具やワークに絡みつく
- 切りくずが長く繋がって処理しにくい(分断不良)
- 切りくずが機械内部やタンクに溜まってしまう(排出不良)
- 機械やワークが錆びる・変色する
- 切削油から異臭(腐敗臭・カビ臭)がする
- 切削油が異常に泡立つ
- 泡立ちによってクーラントタンクから液が溢れる
切削油のトラブルシューティングに役立つ情報が満載ですので、ぜひ最後までご覧いただき、日々の業務改善にお役立てください。
1. 被削材の加工不良(寸法不良、面粗度不良)への対策
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加工不良は製品品質に直結する深刻な問題です。ここでは、加工不良に関する具体的な困りごとと、その原因・対策を見ていきましょう。
【困りごと1】被削材が狙いの寸法より大きく加工される(オーバーサイズ)
- 《主な原因》
- 冷却不足によるワーク・工具の熱膨張
切削熱でワークや工具が膨張したまま加工され、加工後に収縮して狙いより大きくなる。特に水溶性切削油の濃度が低すぎる場合や、不水溶性切削油の粘度が高すぎる場合に発生しやすい。 - 工具のたわみ
潤滑不足による加工抵抗増大で工具が逃げ、結果的にワークが大きく残る。 - 切削油の劣化・汚染
本来の冷却・潤滑性能が発揮されていない。 - 不適切な油種選定
加工条件に対して冷却性や潤滑性が不足している。
- 冷却不足によるワーク・工具の熱膨張
- 《対策》
- 適切な切削油の選定・見直し
加工条件に合った冷却性・潤滑性の高い油剤を選定する(例:冷却性重視ならソリュブル型、潤滑性重視なら油性や高濃度エマルション)。サンワケミカルにご相談いただければ最適な油剤をご提案します。 - 濃度管理の徹底(水溶性)
推奨濃度を維持し、冷却・潤滑性能を確保する。 - 切削油の適切な供給
ノズル位置、向き、流量、圧力を最適化し、加工点へ確実に供給する。 - 液管理の徹底
定期的なフィルター交換やタンク清掃で異物を除去し、油剤の性能を維持する。 - 切削条件の見直し
必要に応じて切削速度や送り速度を調整する。
- 適切な切削油の選定・見直し
【困りごと2】被削材が狙いの寸法より小さく加工される(アンダーサイズ)
- 《主な原因》
- 工具の摩耗進行
工具が摩耗して切れ刃径が小さくなっている。潤滑不足や冷却不足が摩耗を促進。 - 構成刃先の脱落による過剰な切れ込み
不安定な構成刃先が脱落する際にワークをえぐり、小さく加工してしまう。 - 切削油の劣化・汚染
本来の潤滑・冷却性能が低下し、工具摩耗や構成刃先の生成を助長。 - 濃度管理不良(水溶性)
濃度が低すぎると潤滑不足で摩耗が早く、高すぎても冷却不足で摩耗を早めることがある。
- 工具の摩耗進行
- 《対策》
- 工具摩耗対策の徹底
【困りごと7、8】の対策を参照し、適切な切削油選定、濃度管理、供給方法で工具摩耗を抑制する。 - 構成刃先の抑制
潤滑性の高い油剤の選定、適切な切削条件への見直しを行う。 - 定期的な工具交換・管理
工具の状態を定期的に確認し、摩耗が進んでいれば交換する。 - 液管理の徹底
油剤の性能を維持するため、異物除去や定期的な交換を行う。
- 工具摩耗対策の徹底
【困りごと3】被削材の加工寸法が安定しない(寸法ばらつき)
- 《主な原因》
- 熱変位のばらつき
切削油の供給状態の不安定さや液温の変動により、ワークや機械の熱膨張が加工ごとに変わり、寸法がばらつく。 - 潤滑状態の不安定さ
切削油の濃度変化、異物混入、泡立ちなどにより、加工抵抗が不安定になり、工具のたわみ量などが変化する。 - 切りくず処理の不安定さ
切りくずが絡みついたり、再切削されたりすることで、加工抵抗が変動する。 - 切削油の劣化進行
使用時間と共に油剤性能が徐々に変化し、寸法もそれに伴い変化する。
- 熱変位のばらつき
- 《対策》
- 切削油の安定供給
液面管理、ポンプ点検、ノズル清掃を行い、安定した流量・圧力を確保する。 - 濃度・pH管理の徹底
定期的な測定と調整で、油剤の性能を一定に保つ。自動希釈装置の導入も有効。 - 液温管理
クーラントチラーの導入やタンク容量の確保で、液温の変動を抑える。 - 異物除去・濾過の強化
安定した清浄度を保ち、潤滑状態を安定させる。 - 切りくず処理の改善
【困りごと9~11】の対策を参照し、切りくずをスムーズに排出する。 - 定期的な油剤交換
著しく劣化した油剤は交換する。
- 切削油の安定供給
【困りごと4】被削材の加工面にむしれやざらつきが出る
- 《主な原因》
- 潤滑不足・油膜強度不足
工具とワーク間の摩擦が大きく、金属表面が引き裂かれるようにむしれる。特にステンレス鋼やアルミニウム合金で発生しやすい。 - 極圧性不足
高負荷な切削や難削材加工で、刃先とワークの溶着を防ぐ力が不足している。 - 構成刃先の不安定な成長・脱落
構成刃先がワーク表面を傷つける。 - 切削油の洗浄性不足
微細な切りくずが加工面に残り、ざらつきの原因となる。
- 潤滑不足・油膜強度不足
- 《対策》
- 潤滑性・極圧性の高い切削油の選定
油性切削油や、極圧添加剤・油性向上剤が配合された水溶性切削油(エマルション、ソリュブル)を選定する。 - 適切な濃度の維持(水溶性)
濃度を高めに調整することで潤滑性を向上させる(メーカー推奨範囲内)。 - 切削条件の最適化
切削速度や送り速度を調整し、構成刃先の生成を抑制する。 - 洗浄性の高い切削油の選定と適切な供給
微細な切りくずを効果的に除去する。 - 工具の切れ味維持
鋭利な工具を使用する。
- 潤滑性・極圧性の高い切削油の選定
【困りごと5】被削材の加工面に傷やびびりマークが付く
- 《主な原因》
- 異物混入
切削油中に混入した硬い粒子(微細な切りくず、砥粒、機械摩耗粉など)が加工面を引っ掻き、傷を付ける。 - 切りくずの噛み込み
排出されなかった切りくずが工具とワークの間に噛み込まれる。 - びびり振動
加工系の剛性不足や不適切な切削条件に加え、切削油の潤滑性や減衰性が不足していると発生しやすく、加工面に周期的な模様(びびりマーク)が残る。 - 工具のチッピング
工具刃先の微小な欠けが転写される。
- 異物混入
- 《対策》
- 濾過装置の強化・適切な選定
フィルターのメッシュサイズを見直し、異物を効果的に除去する。マグネットセパレーターやサイクロンの併用も検討。 - タンクの定期清掃
沈殿したスラッジを除去する。 - 切りくず排出性の改善
【困りごと9~11】の対策を参照。 - 潤滑性・減衰性の高い切削油の選定
びびり振動を抑制する効果のある油剤を選ぶ。 - 機械剛性の確認と切削条件の最適化
びびりの根本原因対策と合わせて行う。
- 濾過装置の強化・適切な選定
【困りごと6】被削材の加工面の光沢が良くない
- 《主な原因》
- 潤滑不足
仕上げ面が曇ったようになったり、光沢が出なかったりする。 - 不適切な油剤選定
仕上げ面の光沢向上に寄与する成分(油性向上剤など)が不足している。 - 微細な傷やざらつき
【困りごと4、5】で述べた原因により、表面が平滑になっていない。 - 酸化・変色
加工後のワーク表面が酸化したり、油剤成分により変色したりする。
- 潤滑不足
- 《対策》
- 仕上げ加工に適した切削油の選定
潤滑性に優れ、光沢向上効果のある油性切削油や、専用の添加剤が配合された水溶性切削油を選定する。 - 面粗度向上策の実施
【困りごと4、5】の対策を徹底し、微細な傷やざらつきを抑える。 - 加工後の速やかな洗浄・防錆
酸化や変色を防ぐために、加工後は適切な洗浄と防錆処理を行う。 - 被削材との相性確認
特定の金属に対して変色を引き起こさない油剤を選ぶ。
- 仕上げ加工に適した切削油の選定
2. 工具摩耗が激しい場合の対策

工具の状態は加工品質とコストに直結します。ここでは工具に関する困りごとと、その原因・対策を見ていきましょう。
【困りごと7】工具の摩耗が異常に早い(フランク摩耗、クレータ摩耗など)
- 《主な原因》
- 潤滑不足
工具と被削材、工具と切りくず間の摩擦が大きく、工具逃げ面や工具すくい面が早期に摩耗する。 - 冷却不足
加工点の温度が異常に上昇し、工具材種が軟化したり、熱亀裂や酸化摩耗が進行したりする。 - 不適切な添加剤
工具材質と切削油の添加剤(特に極圧添加剤)の相性が悪く、化学的な摩耗を促進する(例:硫黄系と超硬工具)。 - 濃度異常(水溶性)
濃度が低すぎると潤滑・防錆性が不足。高すぎても冷却性が低下し摩耗を促進。 - 供給方法の不備
油剤が加工点に十分に届いていない。 - 切削油の劣化・汚染
本来の性能が発揮されていない。
- 潤滑不足
- 《対策》
- 適切な切削油の選定
加工条件(低速重切削か高速軽切削か)、被削材、工具材質を考慮し、最適な潤滑性と冷却性のバランスを持つ油剤を選定する(例:潤滑性重視なら油性や高濃度エマルション、冷却性重視ならソリュブルやシンセティック)。
工具材質と相性の良い添加剤が配合された油剤を選ぶ。サンワケミカル株式会社では、様々な工具・加工に対応した製品をご用意しています。 - 濃度管理の徹底(水溶性)
メーカー推奨濃度を遵守する。 - 供給方法の改善
高圧クーラント、スルークーラントの活用、ノズル位置・形状・圧力・流量の最適化。 - 切削条件の見直し
切削速度、送り、切り込み量を、油剤の性能や工具の許容範囲に合わせて調整する。 - 定期的な液管理: フィルター交換、タンク清掃、油剤分析などを行い、油剤性能を維持する。
- 適切な切削油の選定
【困りごと8】工具の刃先に構成刃先が生成・脱落しやすい
- 《主な原因》
- 潤滑不足
工具すくい面と切りくずの摩擦が大きく、被削材の一部が刃先に溶着・堆積する。 - 不適切な切削速度
特に中低速域で発生しやすい。 - 切削油の極圧性不足
溶着を防ぐ力が弱い。 - 被削材の特性
アルミニウム合金や軟鋼など、凝着しやすい材料。
- 潤滑不足
- 《対策》
- 潤滑性・極圧性の高い切削油の選定
構成刃先の生成を抑制する効果のある油性向上剤や極圧添加剤が配合された油剤を選ぶ。 - 切削速度の調整
構成刃先が生成しにくい速度域(より低速、またはより高速)に調整する。 - すくい角の大きな工具の使用
切りくずの流れをスムーズにする。 - コーティング工具の使用
表面の摩擦係数が低いコーティングを選ぶ。 - 切削油の適切な供給
加工点へ確実に油剤を供給し、潤滑効果を高める。
- 潤滑性・極圧性の高い切削油の選定
3. 切りくず処理がうまくいかない時の対策

切りくず処理は自動化や品質安定化の鍵です。ここでは切りくずに関する困りごとと、その原因・対策を見ていきましょう。
【困りごと9】切りくずが工具やワークに絡みつく
- 《主な原因》
- 切削油の洗浄力不足
生成された切りくずを加工点から流し去る力が弱い。 - 潤滑不足による切りくずの溶着
切りくずが工具に付着しやすい。 - 不適切な切りくず形状
長く連続した切りくずが発生しやすい(被削材、切削条件による)。 - クーラント供給不足・不適切な方向
切りくずの排出経路を妨げている。
- 切削油の洗浄力不足
- 《対策》
- 洗浄性の高い切削油の選定
低粘度で流動性の良い油剤や、界面活性剤の効果で洗浄力を高めた水溶性切削油を選定する。 - クーラント供給量の増加・高圧化
切りくずを強制的に吹き飛ばす。 - ノズル位置・方向の最適化
切りくずがスムーズに排出されるように調整する。 - チップブレーカー付き工具の使用や切削条件の調整: 切りくずを短く分断する。
- 洗浄性の高い切削油の選定
【困りごと10】切りくずが長く繋がって処理しにくい(分断不良)
- 《主な原因》
- 被削材の延性が高い
ステンレス鋼や一部のアルミニウム合金など。 - 切削油の冷却不足
切りくずが延性を保ったまま生成され、折れにくい。 - 潤滑過剰(まれに)
摩擦が低すぎると切りくずがカールしにくく、長く伸びる場合がある(特に軟鋼など)。 - 不適切な油種
切りくずの脆化を促進する効果が低い油剤。
- 被削材の延性が高い
- 《対策》
- 切りくず分断性に優れた切削油の選定
例えば、硫黄系などの添加剤は切りくずの脆化を促進する効果がある(ただし材質適合性に注意)。 - 冷却性の高い切削油の選定と適切な供給
切りくずを急冷し、脆くする。 - チップブレーカー付き工具の使用、切削条件(送り、切り込み深さ)の調整
物理的に切りくずをコントロールする。 - インターバル供給(間欠供給)
断続的な高圧供給で分断を促す。
- 切りくず分断性に優れた切削油の選定
【困りごと11】切りくずが機械内部やタンクに溜まってしまう(排出不良)
- 《主な原因》
- 切削油の流動性不足(高粘度)
切りくずが油剤にまとわりつき、流れにくい。 - クーラント流量・圧力不足
切りくずを搬送する力が弱い。 - タンク構造の問題
スラッジが堆積しやすい構造、リターン配管の位置が不適切。 - フィルター能力不足・目詰まり
微細な切りくずを除去しきれず、タンク内に蓄積する。 - 泡立ち
油剤の流れが阻害され、排出能力が低下する。
- 切削油の流動性不足(高粘度)
- 《対策》
- 適切な粘度の切削油の選定
排出性を重視する場合は低粘度油剤を選ぶ。 - クーラント供給システムの強化
ポンプ能力の確認、配管径の見直し、高圧クーラントの導入。 - タンク設計の改善・定期清掃
スラッジ除去、コンベアやセパレーターの導入。 - 適切なフィルターの選定とメンテナンス
【困りごと5】の対策も参照。 - 泡立ち対策
【困りごと14、15】の対策を参照。
- 適切な粘度の切削油の選定
4. 機械やワークの腐食・異臭への対策

腐食や異臭は品質問題だけでなく、作業環境にも影響します。ここではこれらの困りごとと、その原因・対策を見ていきましょう。
【困りごと12】機械やワークが錆びる・変色する
- 《主な原因》
- 切削油の防錆力不足
水溶性切削油の濃度低下、防錆剤の劣化・消耗。 - pHの低下(水溶性)
バクテリア繁殖やCO2溶解によりpHが酸性側に傾き、防錆力が低下。 - 希釈水の水質不良
塩素イオンや硫酸イオンが多いと錆を促進。 - 異種金属接触(電食)
電位差のある金属同士が接触し、一方の金属が腐食。 - 油剤成分による変色
特定の添加剤が銅合金などを変色させる。 - 加工後の洗浄不足・不適切な保管
ワーク表面に油剤や切りくずが残留。
- 切削油の防錆力不足
- 《対策》
- 防錆性能の高い切削油の選定
被削材や加工環境に合った防錆力を持つ油剤を選ぶ。サンワケミカルでは長期防錆性に優れた製品もご用意。 - 濃度管理の徹底(水溶性)
推奨濃度を維持し、防錆剤濃度を確保。 - pH管理の徹底(水溶性)
pH8.5以上(目安)を維持。低下時は原因究明と対策。 - 良質な希釈水の使用
可能であればイオン交換水や純水を使用。 - 材質適合性の確認
使用する金属に対して変色を起こさない油剤を選ぶ。 - 加工後の速やかな洗浄と防錆油塗布
特に長期保管する場合。 - 異種金属接触の回避
治具の材質工夫や絶縁処理。
- 防錆性能の高い切削油の選定
【困りごと13】切削油から異臭(腐敗臭・カビ臭)がする
- 《主な原因》
- バクテリア・カビの繁殖
切削油中の有機物や混入油を栄養源とし、嫌気性菌が繁殖すると硫化水素様(ドブのような)の悪臭を、好気性菌やカビが繁殖するとカビ臭やアンモニア臭などを発生させる。 - pHの低下
バクテリアの繁殖しやすい中性域にpHが低下。 - タンク内のスラッジ・浮上油の放置
微生物の温床となる。 - 切削油の酸素不足
液の循環不良や浮上油による酸素遮断で嫌気性菌が優勢になる。
- バクテリア・カビの繁殖
- 《対策》
- 耐腐敗性に優れた切削油の選定
殺菌剤・防カビ剤が効果的に配合され、微生物が繁殖しにくいベースオイルを使用した油剤を選ぶ。 - pH管理の徹底
pHを適正範囲(弱アルカリ性)に維持し、微生物の活動を抑制。 - タンク清掃の徹底
定期的にタンク内のスラッジを除去し、微生物の温床をなくす。 - 浮上油の除去
オイルスキマーなどでこまめに除去する。 - 液の循環促進・エアレーション
タンク内の液をよどませない。ただし過度なエアレーションは泡立ちの原因にもなるため注意。 - 適切な殺菌剤・防カビ剤の使用
メーカーに相談の上、適切な種類と量を添加する(根本対策ではない)。
- 耐腐敗性に優れた切削油の選定
5. 切削油の泡立ち対策

切削油の泡立ちは作業性や加工品質を低下させる厄介な問題です。ここでは泡立ちに関する困りごとと、その原因・対策を見ていきましょう。
【困りごと14】切削油が異常に泡立つ
- 《主な原因》
- 空気の巻き込み
高圧供給、液面落下、液面低下によるポンプの空気吸い込み、タンク構造の問題(攪拌が激しい)、配管からのエア漏れ。 - 切削油の成分
消泡性の低い界面活性剤の使用、消泡剤の枯渇・劣化。 - 水質
軟水の使用(硬水より泡立ちやすい傾向)。 - 異物混入
他の油剤(摺動面油など)や洗浄剤成分の混入。 - 液温
高すぎると粘度低下で空気を巻き込みやすく、低すぎると消泡剤効果が低下することも。 - バクテリア繁殖
代謝物が界面活性作用を持ち、泡立ちを助長。
- 空気の巻き込み
- 《対策》
- 空気巻き込み防止策
- 液面を適正レベルに維持する(液面センサーや自動給水装置の活用)。
- 戻り配管の出口を液面下に設置する、落下高さを低くする。
- タンク内に隔壁を設けるなど、攪拌を抑える構造にする。
- 供給圧力を適正に調整する。配管のエア漏れを点検する。
- 消泡剤の適切な使用・選定
- 応急処置として、適合する消泡剤を適量添加する(メーカー相談推奨)。
- 根本対策として、消泡性に優れた切削油を選定する。サンワケミカルでは低泡性製品を多数ラインナップ。
- 切削油と水質の管理
- 適正な濃度を維持する(高濃度で泡立ちやすい場合もある)。
- 異物混入を防ぐ(オイルスキマー活用など)。
- 極端な軟水の場合は、水質調整を検討する(専門家相談推奨)。
- 耐腐敗性の確保
バクテリア繁殖を抑える。 - 適切なフィルター選定
消泡剤まで除去するような目の細かすぎるフィルターは避ける。 - 液温管理
クーラントチラーなどで液温を適正範囲に保つ。
- 空気巻き込み防止策
【困りごと15】泡立ちによってクーラントタンクから液が溢れる
- 《主な原因》
- 【困りごと14】で述べた要因による持続的かつ大量の泡立ち。
- タンク容量に対してクーラント液量が多すぎる(適正液面を超えている)。
- クーラントの粘度が高く、泡が消えにくい。
- 《対策》
- 根本的な泡立ち対策の実施
【困りごと14】の対策を徹底する。 - タンク液面の適正化
液量を規定範囲内に調整する。 - 消泡装置の設置検討
持続的に泡を物理的に破壊する装置の導入も検討(例:メカニカルシール型消泡装置)。 - タンク設計の見直し
泡が滞留しにくい、あるいは自然に破泡しやすいタンク構造を検討する。 - 応急処置
消泡剤の緊急添加、機械の一時停止による泡の沈静化。
- 根本的な泡立ち対策の実施
まとめ
本記事では、機械加工の現場で頻繁に発生する切削油に関する代表的な15のトラブルについて、それぞれ一問一答形式で、その原因と具体的な解決方法を詳しく解説しました。
- 【寸法不良】 オーバーサイズ
- 【寸法不良】 アンダーサイズ
- 【寸法不良】 寸法ばらつき
- 【面粗度不良】 むしれ・ざらつき
- 【面粗度不良】 傷・びびりマーク
- 【面粗度不良】 光沢不足
- 【工具トラブル】 工具摩耗が早い
- 【工具トラブル】 構成刃先の生成・脱落
- 【切りくずトラブル】 切りくずの絡みつき
- 【切りくずトラブル】 切りくずの分断不良
- 【切りくずトラブル】 切りくずの排出不良・堆積
- 【腐食・変色】 機械・ワークの錆び・変色
- 【油剤劣化】 異臭(腐敗臭・カビ臭)
- 【泡立ち】 切削油の異常な泡立ち
- 【泡立ち】 クーラントタンクからの液溢れ
これらの対策を日々の現場管理に取り入れ、実践することで、加工不良の削減、工具寿命の延長、切りくず処理の効率化、機械・ワークの保護、作業環境の改善に繋がり、結果として生産性の向上とコスト削減を実現できるはずです。
「切削油」は、単なる「潤滑油」や「冷却水」ではなく、加工プロセス全体を最適化するための重要な機能部品です。その選定と管理には、専門的な知識と経験が求められます。
サンワケミカル株式会社は、長年の経験と技術に基づき、多種多様な切削油剤を開発・製造しております。お客様の加工条件やニーズに合わせた最適な製品をご提案いたしますので、切削油に関するご相談は、ぜひお気軽にお問い合わせください。
もし、この記事で紹介した対策を試しても問題が解決しない場合や、お使いの切削油に関するより詳細な情報、お客様の特定の加工に最適な油剤の選定についてご相談がありましたら、どうぞお気軽に私たちサンワケミカル株式会社までお問い合わせください。経験豊富な専門スタッフが、お客様の状況を詳しくお伺いし、最適なソリューションをご提案いたします。
サンワケミカル株式会社HP:http://sanwachemical.co.jp/
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今後も、金属加工の現場で役立つ情報を発信してまいりますので、サンワケミカル株式会社公式ブログにご期待ください。