【弊社実測】温度補正なしの屈折計は液温50℃で26%低く出る|クーラント濃度を正しく測る手順とBrix換算
同じ液なのに測るたびに値が違う|その正体は「液温」かもしれません
「朝と昼で濃度の値が変わる」
「屈折計の値を信じて原液を足したら、今度は濃すぎた」
水溶性切削油の濃度管理で、こうした「値のずれ」に心当たりのある方は多いのではないでしょうか。実は、屈折計の読み値は中身の濃度が同じでも、液温だけで大きく変わります。温度補正なしの屈折計での弊社実測では、同じ希釈液が液温50℃のとき、25℃のときより約26%低い値を示しました。
この記事では、切削油剤および洗浄液の専門メーカーであるサンワケミカルが、屈折計の温度誤差の実測データと、誤差を避けて正しく測るための手順に絞って解説します。濃度の適正範囲や補給方法といった濃度管理の全体像は、水溶性切削油の濃度管理の基本をご覧ください。
1. 屈折計は何を測っているのか|Brix値と換算係数の基本

まず押さえたいのは、屈折計が表示しているのは濃度そのものではなく、光の屈折の度合いをショ糖水溶液の濃度に置き換えた「Brix%」という目安の値だということです。
屈折計は、液体に光を通したときの屈折率が濃度によって変わる性質を利用した測定器です。目盛りはショ糖(砂糖)水溶液を基準に作られているため、切削油の希釈液を測ったときの読み値はショ糖換算の目安にすぎません。
そこで必要になるのが、油剤ごとに決められた換算係数(ファクター)です。屈折計の読み値に換算係数を掛けることで、実際の濃度が求められます。たとえば、仮に換算係数が1.5の油剤で読み値が4.0Brix%なら、実際の濃度は4.0×1.5で6.0%となります。換算係数は製品ごとに異なるため、必ずメーカーの製品資料で確認してください。
つまり屈折計での濃度管理は、「屈折率を読む→Brix%に置き換える→換算係数で実濃度に直す」という二段階の置き換えで成り立っています。そして最初の「屈折率」が液温の影響を受けるため、温度によって読み値全体がずれてしまうのです。
この章の要約
屈折計の表示はショ糖換算のBrix%であり、濃度そのものではありません。実濃度は読み値に油剤固有の換算係数を掛けて求めます。屈折率は液温の影響を受けるため、次章で見るように温度だけで読み値が大きく変わります。
2. 液温で値はどれだけ狂うのか|弊社実測データ

結論から言うと、同じ濃度の液でも、液温が変わるだけで屈折計の読み値は2割以上ずれることがあります。弊社で温度補正なしの屈折計を使い、同じ希釈液(弊社製スーパークールANS-765Eの20倍希釈液)を液温だけ変えて測定した結果が次の表です。
| 液温 | 読み値(Brix%) | 25℃比のずれ |
| 5℃ | 5.6 | 約12%高く表示 |
| 25℃前後(室温) | 5.0 | 基準 |
| 50℃ | 3.7 | 約26%低く表示 |
※温度補正機能のない屈折計での弊社測定の一例です。数値は機器や液の状態により変動します。
中身の濃度はまったく同じです。それでも、冬場の冷えた液に近い5℃では高めに、加工直後の熱い液に近い50℃では大幅に低めに表示されました。読み値ベースで約26%(Brix値では1.3ポイント)の差です。50℃は加工直後や真夏の重切削など液温が上限側に振れた条件ですが、タンク液温が35〜40℃程度でも同じ方向のずれは生じます。
なぜ温度で読み値がずれるのか
液体は温度が上がると膨張して密度が下がり、屈折率も小さくなります。一方、屈折計のBrix目盛りは一般に20℃前後の液温を基準に作られているため、基準より熱い液を測れば実際より低く、冷たい液を測れば実際より高く表示されます。
この性質を知らないまま値を真に受けると、判断を誤ります。やっかいなのは、夏は蒸発による本当の濃度上昇が温度誤差と同時に進むことです。実濃度の上昇は読み値を押し上げ、温度誤差は読み値を押し下げるため、読み値が正常に見えても実際の濃度は上がっていることがあります。さらに、低めの読み値を信じて原液を足すと、二重に濃くなってしまいます。夏場の液管理全体は真夏のクーラント対策で解説しています。逆に冬は高めに表示されるため、「濃すぎる」と思って水を足すと、実際には薄まりすぎて防錆力や耐腐敗性の低下を招くことがあります。
この章の要約
弊社実測では、同じ希釈液が5℃で5.6Brix%、25℃前後で5.0Brix%、50℃で3.7Brix%と、液温だけで読み値が大きく振れました。目盛りは20℃前後基準のため、夏は低め、冬は高めに出ます。値だけを真に受けた補給は、濃度をかえって狂わせる原因になります。
3. 正しく測る手順|校正・サンプリング・温度合わせ

温度誤差を含めた測定のばらつきは、測る前の準備をそろえることでほとんど抑えられます。ここでは、アナログ式ハンディ屈折計を想定した基本手順を順番に整理します。
測定の基本5ステップ
1. ゼロ点校正を行う
プリズム面と採光板をきれいに清掃したあと、できれば蒸留水や純水、なければ水道水を1〜2滴垂らして採光板を閉じ、視野の明暗の境界線が0%の目盛りに合っているか確認します。ずれていれば調整ネジで合わせます。校正は測定のたびに行うのが理想です。
2. 浮上油と切りくずを避けてサンプリングする
液面には混入した潤滑油などの浮上油が漂っていることが多く、これを一緒にすくうと境界線がぼやけたり値が狂ったりします。液面の油膜を避け、タンクの中間層から採取するのが基本です。汚れが多い場合は、採取した液をしばらく静置し、上澄みを測るとより安定します。
3. サンプルを室温に馴染ませる
ここが温度誤差対策の核心です。加工直後の熱い液をそのまま測らず、採取した少量のサンプルを室温に馴染ませてから測定します。サンプル容器の外側を触って熱さを感じなくなる程度まで待つのが目安です。待つ間は蒸発による濃縮を防ぐため、容器にフタをしてください。第2章の実測のとおり、この一手間だけで2割を超えるずれを避けられます。
4. 測定して換算係数を掛ける
プリズム面に気泡が入らないようサンプルを1〜2滴垂らし、境界線の目盛りを読み取ります。読み値に油剤固有の換算係数を掛けて、実濃度として記録します。
5. 測定後すぐに清掃する
測り終えたら、プリズム面と採光板を速やかに清掃して乾燥させます。前回の液が残っていると、次の測定値に影響します。
この章の要約
正確な測定は、ゼロ点校正、浮上油を避けた中間層からのサンプリング、室温への温度合わせ、換算係数での換算、測定後の清掃という5ステップで実現できます。特に「室温に馴染ませる」一手間が、温度誤差対策としてもっとも効果的です。
4. ATC(自動温度補正)付きなら安心か|補正の範囲と限界
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温度補正機能(ATC)付きの屈折計は温度誤差対策として有効ですが、「熱い液をそのまま測ってよい」という意味ではありません。補正には範囲と限界があります。
ひとくちにATCといっても、方式によって仕組みが異なります。アナログ式のATCは機器側の温度を補正する仕組みのため、サンプルと機器の温度が揃っていることが前提です。熱い液をのせた直後はこの前提が崩れ、誤差が残ります。デジタル式のATCはプリズム部の温度を測って補正するため精度は高いものの、のせた直後はサンプルの温度が変化している最中のため、表示が安定するまで待つ必要があります。また、補正できる温度範囲は機種により異なり(例として10〜40℃程度)、範囲を超える高温の液は補正の保証外です。さらに補正の基準はショ糖水溶液のため、クーラントでは高温域でずれが残ることがあります。
そこでおすすめしたいのが、液温がもっとも安定している始業前に測ることです。機械が止まっていた朝は液温が室温に近いためです。始業前が難しい場合でも、毎日できるだけ同じ時間帯・同じ条件で測るようにすれば、値のブレが減り、変化の傾向をつかみやすくなります。
この章の要約
アナログ式ATCは機器側の温度補正のため熱い液には対応できず、デジタル式も表示の安定待ちと補正範囲の確認が必要です。ATC付きでも、液温が安定する始業前の測定、または毎日同じ時間帯・同じ条件での測定を基本にすることで、値の信頼性が大きく高まります。
5. 毎日の運用に落とし込む|記録・pH併用・点検頻度

測定精度を高める最後の仕上げは、測り方を毎日の運用として固定し、記録して傾向を見ることです。一回一回の値の正確さに加えて、「同じ条件で測り続けた値の流れ」こそが、液の異変を早く教えてくれます。
毎日同じ時間帯・同じ手順で測った値を記録していくと、蒸発による濃度上昇や水の混入による低下といった変化が、数日単位の傾向として見えてきます。
また、濃度の数値だけを追わないことも大切です。濃度は適正でも、pHが下がっていたり臭いが出始めていたりすれば、液は弱り始めています。濃度・pH・臭い・液色・浮上油をセットで確認する日常点検の項目立ては、日常点検チェックリストで紹介しています。濃度測定を含めた液管理全体の考え方は、切削油の管理方法もあわせてご覧ください。
この章の要約
測定は「同じ時間帯・同じ条件・記録して傾向を見る」の3点セットで運用に落とし込みます。濃度だけでなくpHや臭いも併用して確認することで、屈折計の数値だけでは見えない液の変化に早く気づけます。
よくある質問
屈折計のBrix値をそのまま濃度と見てよいですか?
いいえ、Brix値はショ糖換算の目安であり、そのまま濃度ではありません。実際の濃度は、読み値に油剤固有の換算係数を掛けて算出します。換算係数は製品ごとに異なるため、必ずメーカーの製品資料で確認してください。詳しくは水溶性切削油の濃度管理の基本で解説しています。
濃度は朝と昼、どちらに測るのが正確ですか?
液温が安定している始業前(朝)の測定をおすすめします。屈折計の目盛りは一般に20℃前後の液温を基準に作られており、弊社実測でも同じ希釈液が5℃では5.6Brix%、50℃では3.7Brix%と読み値が振れました。液温が上がる夏は低め、冷える冬は高めに出やすいため、日中に測る場合はサンプルを室温に馴染ませてから測るのが確実です。
ATC(自動温度補正)付きの屈折計なら液温は気にしなくてよいですか?
いいえ、ATC付きでも液温への注意は必要です。アナログ式のATCは機器側の温度を補正する仕組みのため、熱い液をのせた直後は誤差が残ります。デジタル式も表示が安定するまで待つことと、補正できる温度範囲(機種により異なります)を超えないことが前提です。液温が安定する始業前に測るか、毎日同じ時間帯・同じ条件で測ることをおすすめします。
屈折計の値と液の調子が合わないときは、何を疑えばよいですか?
まずプリズム面の汚れ、サンプルへの浮上油や切りくずの混入、液温の影響を確認してください。それでも合わない場合は、濃度以外の要因としてpHの低下や油剤の劣化が進んでいることがあります。日常点検チェックリストを参考に複数の指標で確認し、判断が難しければメーカーへの分析依頼も有効です。
まとめ
屈折計は手軽で頼れる測定器ですが、表示されるのはショ糖換算のBrix%であり、しかもその値は液温の影響を受けます。温度補正なしの屈折計での弊社実測では、同じ希釈液が液温50℃のとき、25℃のときより約26%低い3.7Brix%を示しました。この性質を知らずに値を真に受けると、夏は足しすぎ、冬は薄めすぎという逆方向の失敗につながります。
対策はシンプルです。ゼロ点校正と清掃を欠かさず、浮上油を避けてサンプリングし、サンプルを室温に馴染ませてから測って、換算係数で実濃度に直す。そして毎日同じ時間帯・同じ条件で測り、記録して傾向を見る。この習慣が定着すれば、屈折計の値は現場でもっとも信頼できる指標のひとつになり、手戻りを防いで次工程へ品質を繋ぐ土台になります。
サンワケミカルでは、お使いの油剤の換算係数のご案内はもちろん、測定値が安定しないといったお悩みのご相談も承っています。測定方法や液管理でお困りの際は、ぜひ一度ご相談ください。
サンワケミカル株式会社は、長年の経験と技術に基づき、多種多様な切削油剤を開発・製造しております。お客様の加工条件やニーズに合わせた最適な製品をご提案いたしますので、切削油に関するご相談は、ぜひお気軽にお問い合わせください。
もし、この記事で紹介した対策を試しても問題が解決しない場合や、お使いの切削油に関するより詳細な情報、お客様の特定の加工に最適な油剤の選定についてご相談がありましたら、どうぞお気軽に私たちサンワケミカル株式会社までお問い合わせください。経験豊富な専門スタッフが、お客様の状況を詳しくお伺いし、最適なソリューションをご提案いたします。
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