【用途別】切削油の選び方完全ガイド|金属加工の種類と最適製品

金属加工の現場において、切削油は加工精度、工具寿命、そして生産効率を大きく左右する重要な要素です。しかし、多種多様な切削油が存在する中で、どの製品が自身の加工に最適なのか迷う方も少なくないでしょう。
そこで本記事では、「用途別切削油の選び方:最適な製品を見つけるための完全ガイド」として、旋盤加工、フライス加工、研削加工、特殊加工、そして材質別に最適な切削油の種類と選び方のポイントを徹底解説いたします。適切な切削油を選ぶことで、加工の悩みを解決し、より高品質で効率的な金属加工を実現しましょう。
1. 旋盤加工に最適な切削油と選び方のポイント

旋盤加工は、ワークピースを回転させながら刃物を当てて切削する加工方法であり、連続切削となるため、比較的高い切削速度と安定した潤滑性が求められます。適切な切削油を選ぶことは、仕上げ面粗さの向上、工具寿命の延長、そして切りくず処理の効率化に不可欠です。
旋削加工に適した切削油のタイプ
旋削加工には、主に以下のタイプの切削油が適しています。
- 油性切削油
潤滑性に非常に優れており、低〜中速の切削において、優れた仕上げ面粗さと工具寿命を実現します。特に、炭素鋼や合金鋼などの比較的軟らかい材料の精密仕上げに適しています。高精度なねじ切り加工など、高い潤滑性が求められる場面で有効です。 - エマルジョン型切削油
水に油を乳化させたもので、冷却性と潤滑性のバランスが良いのが特徴です。中〜高速の切削において、幅広い被削材に対応できます。汎用性が高く、多くの旋盤加工現場で採用されています。添加剤の種類によって、潤滑性や冷却性を調整できる製品もあります。 - ソリュブル型切削油
油を水に溶解させたもので、エマルジョン型よりもさらに冷却性に優れています。高速切削や、ある程度の潤滑性を確保しつつ冷却性も重視したい場合に適しています。切りくずの排出性にも優れているため、自動旋盤などでの連続加工にも適しています。
製品選びのポイント
旋盤加工における切削油選びでは、以下の点を考慮することが重要です。
- 仕上げ面粗さ
高い面粗さが求められる場合は、潤滑性に優れた油性切削油や、油性向上剤が効果的に配合されたエマルジョン型切削油を選びます。工具とワークピースの摩擦を低減し、滑らかな加工面を得るために、適切な粘度の油剤を選定することも重要です。 - 工具寿命
工具の摩耗を抑制するためには、適切な潤滑性を持つ切削油を選定することが重要です。特に、ステンレス鋼やインコネルなどの難削材の加工では、極圧添加剤が配合された油剤が工具の刃先を保護し、寿命を延ばします。 - 切りくず処理
切りくずが長く連なって絡みやすい材料の場合、洗浄性の高いエマルジョン型やソリュブル型切削油を使用することで、切りくずの排出を促進し、工具への巻き付きや加工不良を防ぎます。クーラントの高圧噴射と組み合わせることで、より効果的な切りくず処理が可能です。 - 被削材の材質
炭素鋼、合金鋼、ステンレス鋼など、被削材の種類によって最適な切削油は異なります。材質に合わせた推奨製品を選ぶことが重要です(詳細は後述)。
具体的な製品事例と適用事例
例えば、炭素鋼の精密仕上げには、高潤滑性の油性切削油が適しています。これにより、鏡面のような美しい仕上がり面と、工具の摩耗を抑えた長寿命化が期待できます。一方、合金鋼の中〜高速旋削加工には、冷却性と潤滑性のバランスに優れたエマルジョン型切削油が推奨されます。特に、熱が発生しやすい高速加工においては、冷却性能が重要となります。切りくずの排出が課題となる自動旋盤でのバー材加工などでは、ソリュブル型切削油を高圧で供給することで、効率的な切りくず処理と加工安定性を両立できます。
2. フライス加工に適した切削油の種類と特性

フライス加工は、回転する工具(フライス)をワークピースに送り込んで切削する加工方法であり、断続切削が特徴です。そのため、切削油には高い冷却性と、切りくずを効果的に排出する洗浄性が求められます。また、工具の刃先を保護し、摩耗を防ぐための潤滑性も重要です。
フライス加工に適した切削油のタイプ
フライス加工には、主に以下のタイプの切削油が適しています。
- エマルジョン型切削油
冷却性と潤滑性のバランスが取れており、中程度の切削速度のフライス加工に適しています。油性添加剤が配合された製品を選ぶことで、潤滑性を向上させることも可能です。特に、比較的軟らかい材料の加工で、良好な面粗さと工具寿命を両立できます。 - ソリュブル型切削油
高い冷却性と洗浄性を持ち合わせており、断続切削で発生する熱を効果的に除去し、切りくずを加工点から洗い流します。幅広い被削材に対応でき、汎用性の高い切削油です。特に、溝加工やポケット加工など、切りくずが滞留しやすい加工でその効果を発揮します。 - シンセティック型切削油
優れた冷却性、洗浄性に加え、高い極圧性を持つ製品もあります。難削材のフライス加工や、高速・高精度な加工に適しています。泡立ちにくい特性も持ち合わせており、高速回転での加工安定性に優れます。
製品選びのポイント
フライス加工における切削油選びでは、以下の点を考慮することが重要です。
- 冷却性
断続切削による急激な温度上昇を抑えるために、冷却性の高いソリュブル型やシンセティック型切削油を選びます。特に、高送りや深い切り込みでの加工では、冷却性能が重要となります。 - 洗浄性
切りくずを効果的に除去し、再切削を防ぐために、洗浄性の高い切削油を選びます。特に、エンドミル加工における切りくずの排出不良は、工具破損や加工不良の原因となるため、注意が必要です。 - 工具保護
工具の刃先を保護し、摩耗を防ぐために、適切な潤滑性を持つ切削油を選びます。難削材加工では、極圧添加剤配合の油剤が工具の寿命を大きく左右します。 - 工具の種類
エンドミル、正面フライス、側フライスなど、使用する工具の種類によって最適な切削油が異なる場合があります。工具メーカーの推奨などを参考に選定することも重要です。例えば、超硬エンドミルを使用する高速加工では、冷却性と潤滑性に優れたシンセティック型が推奨されることがあります。
工具の種類に応じた推奨切削油
例えば、一般的な炭素鋼や合金鋼のエンドミル加工には、冷却性と洗浄性に優れたソリュブル型切削油が適しています。これにより、切りくずの排出がスムーズに行われ、工具の寿命を延ばすことができます。ステンレス鋼やチタン合金などの難削材を高速でフライス加工する場合は、高い冷却性と極圧性を持つシンセティック型切削油が推奨されます。正面フライス加工で良好な面粗さを得るためには、潤滑性も考慮したエマルジョン型切削油も選択肢となります。特に、仕上げ加工においては、油性添加剤が効果を発揮します。
3. 研削加工で高精度を実現する切削油の選び方

研削加工は、砥石を用いて微細な切削を行うため、加工精度が非常に高く求められます。切削油は、加工時の発熱を抑え、砥石の目詰まりを防ぎ、良好な加工面を得るために重要な役割を果たします。
研削加工における切削油の重要性
研削加工では、微細な切りくずが大量に発生し、これが砥石の気孔に詰まると、研削能力が著しく低下します。また、切削熱によってワークピースが熱膨張し、精密な寸法精度を維持することが困難になります。適切な切削油を使用することで、これらの問題を解決し、高精度な加工と砥石の長寿命化を実現できます。
低粘度で冷却性と洗浄性に優れた切削油の選び方
研削加工に適した切削油は、一般的に低粘度で、高い冷却性と洗浄性を持つものが推奨されます。
- ソリュブル型切削油
水溶性であり、優れた冷却性と洗浄性を発揮します。低粘度の製品が多く、砥石の目詰まりを防ぎながら、発生した熱を効果的に除去します。また、防錆性にも優れているため、加工後のワークピースや機械の錆びを防ぎます。
シンセティック型切削油(化学合成型)、ケミカルソリューション型
非常に高い冷却性と洗浄性を持ち、さらに潤滑性や防錆性にも優れています。精密研削や難削材の研削に適しており、砥石の寿命延長にも貢献します。油性成分が少ないため、加工後の洗浄が容易であるというメリットもあります。
具体的な製品事例と粒度や材質に応じた推奨切削油
例えば、一般的な鋼材の平面研削には、低粘度のソリュブル型切削油が適しています。これにより、砥石の目詰まりを最小限に抑えつつ、効果的な冷却と洗浄が行われ、安定した加工精度を維持できます。超硬合金やセラミックスなどの難削材を高精度に研削する場合は、シンセティック型切削油を使用することで、より高い冷却性と潤滑性を確保し、砥石の摩耗を抑制できます。また、砥石の粒度が細かい精密仕上げ研削では、より低粘度の切削油を選び、砥石の目詰まりを徹底的に防ぐことが重要です。砥石の材質(例えば、WA、GCなど)によって、最適な切削油の成分が異なる場合もあるため、砥石メーカーの推奨も参考に選定することが重要です。
4. 特殊加工(深穴、高速など)向け切削油の選定
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近年、より高度な加工ニーズに対応するため、深穴加工や高速加工といった特殊な加工方法が用いられるケースが増えています。これらの特殊加工では、通常の切削油では対応できない特有の課題が生じるため、専用の切削油を選定する必要があります。
深穴加工向け切削油の選定
深穴加工では、工具の先端まで切削油を確実に供給し、切りくずをスムーズに排出することが非常に重要です。潤滑性が不足すると、工具の焼き付きや破損の原因となり、切りくずの排出不良は加工不良を引き起こします。
深穴加工に適した切削油は、一般的に以下の特性を持ちます。
- 高い潤滑性
工具とワークピースの接触面での摩擦を低減し、焼き付きを防ぎます。特に、工具の先端部は潤滑油が届きにくいため、油膜保持性の高い油剤を選定することが重要です。 - 優れた浸透性
工具の先端までスムーズに浸透し、潤滑と冷却の効果を発揮します。低粘度で浸透性の高い油剤や、特殊な添加剤が配合された油剤が用いられます。 - 良好な切りくず排出性
切りくずを効率的に加工領域から排出するための適切な粘度と流動性が必要です。高圧クーラントシステムと組み合わせて使用されることが多く、その圧力に耐えうる油剤を選定する必要があります。
専用の深穴加工油や、油性添加剤を強化したソリュブル型切削油などが用いられます。
高速加工向け切削油の選定
高速加工では、工具とワークピースの接触時間が短いため、切削油には瞬時に冷却し、油膜を保持する高い性能が求められます。発熱量が大きいため、冷却性能が不足すると、工具の早期摩耗やワークピースの熱変形につながります。
高速加工に適した切削油は、一般的に以下の特性を持ちます。
- 高い冷却性
発生した大量の熱を素早く効果的に除去します。シンセティック型切削油や、冷却性能に特化した添加剤が配合された油剤が有効です。 - 優れた油膜保持性
高速回転下でも安定した油膜を形成し、工具とワークピースの直接接触を防ぎます。極圧添加剤や油性向上剤が、高速での摩擦による摩耗を抑制します。 - 低ミスト性
高速回転による油剤のミスト化を抑制し、作業環境の悪化を防ぎます。ミスト抑制剤が配合された油剤を選ぶことで、作業者の健康と安全に配慮した環境を維持できます。
シンセティック型切削油や、特殊な添加剤を配合した高性能なエマルジョン型切削油などが用いられます。
それぞれの特殊加工に適した高機能な切削油
深穴加工には、低粘度で潤滑性に優れた専用油や、高圧クーラントに対応した油剤が推奨されます。高速加工には、冷却性能と油膜保持性に優れたシンセティック型や、ミスト抑制効果のある高性能エマルジョン型切削油が適しています。加工方法や被削材、工具の種類に応じて、最適な切削油を選定することが重要です。サンワケミカル株式会社では、特殊加工に対応した高機能な切削油も取り扱っております。
5. 材質別おすすめ切削油と注意点(鉄、アルミ、ステンレスなど)
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被削材の材質によって、切削時の特性や注意点が大きく異なるため、最適な切削油を選ぶことが、高品質な加工と工具の長寿命化に不可欠です。
鉄鋼材料向け切削油
炭素鋼や合金鋼などの鉄鋼材料は、比較的切削性が良いですが、加工硬化や構成刃先の生成が問題となることがあります。汎用的なエマルジョン型切削油に加え、潤滑性を向上させる添加剤が配合された油剤が適しています。硬度の高い合金鋼や特殊鋼には、極圧添加剤を含む切削油を使用することで、工具摩耗を抑制し、加工精度を向上させることができます。サンワケミカル株式会社では、幅広い種類の鉄鋼材料に対応した切削油を取り揃えております。
アルミニウム合金向け切削油
アルミニウム合金は、柔らかく切削抵抗が低い一方、凝着性があり、工具に溶着しやすい性質があります。また、一部の油剤成分によって腐食を引き起こす可能性があるため注意が必要です。冷却性と洗浄性に優れたソリュブル型やシンセティック型切削油が推奨されます。腐食防止剤が配合されたアルミニウム合金専用の切削油を選ぶことも重要です。サンワケミカル株式会社にも、アルミニウム合金の加工に適した専用の切削油がございます。
ステンレス鋼向け切削油
ステンレス鋼は、加工硬化しやすく、熱伝導率が低いため、切削時の発熱が大きいという特性があります。また、凝着性も高く、工具摩耗が進みやすい難削材です。高い潤滑性と冷却性を両立させた切削油が求められます。極圧添加剤や油性向上剤が効果的に配合されたエマルジョン型やシンセティック型切削油が適しています。低速高送りでじっくり加工する場合には、不水溶性切削油も選択肢となります。サンワケミカル株式会社は、ステンレス鋼の加工に最適な高性能切削油を豊富にラインナップしております。
材質特有の注意点と対策
- アルミニウムの腐食
アルカリ性の強い切削油は避けるべきです。pH管理を適切に行い、専用の腐食防止剤入り切削油を選びましょう。 - ステンレスの加工硬化
適切な切削速度と送り速度を選定し、工具の摩耗を最小限に抑えることが重要です。潤滑性の高い切削油を使用し、切削熱を効果的に除去しましょう。 - 鉄鋼材料の構成刃先
切削速度や送り速度を調整するとともに、油性向上剤が配合された切削油を使用することで、構成刃先の生成を抑制できます。
成功事例
例えば、ある自動車部品メーカーでは、これまで汎用のエマルジョン型切削油を使用していたステンレス鋼の旋削加工において、加工硬化と工具摩耗に悩んでいました。そこで、高潤滑性と冷却性に優れたシンセティック型切削油に変更したところ、工具寿命が3倍に延び、加工精度も大幅に向上しました。サンワケミカル株式会社の高性能切削油は、このような課題解決に貢献しています。
まとめ
このガイドでは、様々な金属加工の種類と、それぞれの用途に最適な切削油の選び方を詳しく解説しました。旋盤加工、フライス加工、研削加工といった基本的な加工方法から、深穴加工や高速加工などの特殊加工、そして鉄、アルミニウム、ステンレスといった主要な被削材ごとに、最適な切削油の種類と選び方のポイントをご理解いただけたかと思います。
加工内容や求める品質に応じて適切な切削油を選ぶことは、生産性の向上と不良率の低減に繋がり、結果としてコスト削減にも貢献します。
サンワケミカル株式会社では、長年の経験と豊富な知識に基づき、多様なニーズに対応できる高性能な切削油を幅広く取り揃えております。本記事を参考に、お客様の加工現場に最適な切削油をお選びいただき、より効率的で高品質な金属加工を実現していただければ幸いです。
もし、この記事で紹介した対策を試しても問題が解決しない場合や、お使いの切削油に関するより詳細な情報、お客様の特定の加工に最適な油剤の選定についてご相談がありましたら、どうぞお気軽に私たちサンワケミカル株式会社までお問い合わせください。経験豊富な専門スタッフが、お客様の状況を詳しくお伺いし、最適なソリューションをご提案いたします。
サンワケミカル株式会社HP:http://sanwachemical.co.jp/
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