銅加工, 真鍮加工, 切削油, 油剤選定, 非鉄金属, 溶着, バリ, 腐食 【銅・真鍮加工の品質向上】最適な切削油の選び方と使用のポイント

【銅・真鍮加工の品質向上】最適な切削油の選び方と使用のポイント

【銅・真鍮加工の品質向上】最適な切削油の選び方と使用のポイント
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【銅・真鍮加工の品質向上】最適な切削油の選び方と使用のポイント

電気・電子部品の端子やコネクタ、水回りや空調設備のバルブ部品、楽器、そして装飾品…。優れた導電性、熱伝導性、加工性、そして美しい輝きを持つ銅および真鍮(銅と亜鉛の合金)は、私たちの身の回りのあらゆる製品に不可欠な金属材料です。しかし、その加工の現場では、「工具に材料がまとわりついて、仕上げ面が荒れてしまう」「やっかいなバリが出て、後工程に手間がかかる」「加工後に製品が変色してしまった」といった、銅・真鍮特有のトラブルに頭を悩ませている担当者様も少なくないでしょう。

これらの課題を克服し、トラブルを未然に回避して高精度な仕上げを実現するための最も重要な鍵は、「切削油の戦略的な活用」にあります。銅・真鍮加工の成功は、その材質特有の性質を深く理解し、それに最適化された切削油を選定し、正しく使用することで、初めて可能になるのです。

この記事では、銅・真鍮加工の品質向上を目指すため、切削油の活用法に徹底的に焦点を当てます。銅・真鍮の切削特性の基本から、トラブルを回避するための最適な切削油の選び方、効果を最大化する供給方法、そして品質を損なう変色・腐食を防ぐための管理ポイントまで、失敗しないための具体的な使用ポイントを網羅的に解説いたします。

1. 銅・真鍮の切削加工特性(軟らかさ、熱伝導性、凝着性)

銅・真鍮の切削加工特性(軟らかさ、熱伝導性、凝着性)
銅・真鍮の切削加工特性(軟らかさ、熱伝導性、凝着性)

銅・真鍮加工を成功させる鍵は、その材質が持つ「高い凝着性(工具にくっつきやすい性質)」と「優れた熱伝導性」、そして「化学的な敏感さ(変色・腐食しやすさ)」という、相反するような特性を同時に理解することです。これらの特性が、切削油に高い潤滑性と、化学的な安定性の両方を強く要求する原因となります。

適切な切削油を選ぶためには、まず加工する相手である銅や真鍮が、切削時にどのような挙動を示すのか、その「性格」をよく知ることが重要です。

銅および真鍮の物理的・化学的特性と切削加工における挙動

軟らかさと高い延性・展性(粘り強さ)
特性

純銅も、快削黄銅などの一部を除いた多くの真鍮も、鉄鋼材料に比べて非常に軟らかく、粘り強い(延性・展性が高い)という性質を持っています。

切削加工における影響
  • 高い凝着性(溶着性)
    この粘り強さが、切削加工における最大の課題である「凝着(ようちゃく)」を引き起こします。加工中に発生した熱と圧力により、切りくずが工具の刃先に強くくっついてしまう現象です。これが進行すると、切れ刃に銅や真鍮が雪だるま式に付着・堆積する「構成刃先」が大きく成長し、加工精度や面粗度を著しく悪化させます。
  • バリの発生しやすさ
    材質が粘り強いため、スパッと切れずに引き延ばされるように変形しやすく、加工部のエッジに大きな「バリ」が発生しやすくなります。このバリの除去は、後工程の大きな負担となります。
非常に高い熱伝導性
特性

銅は、金属の中でも銀に次いで2番目に熱伝導率が高いことで知られています。真鍮も、鉄鋼材料に比べるとはるかに高い熱伝導性を持ちます。

切削加工における影響

これは、加工点で発生した熱が、ワークピース全体に素早く拡散しやすいことを意味します。工具の刃先に熱が集中しにくいという点ではメリットですが、ワーク全体が熱膨張しやすくなるため、精密な寸法精度を維持するためには、ワーク全体の温度をコントロールするという視点での「冷却」が重要になります。

化学的な反応性(変色・腐食しやすさ)
特性

銅および銅合金は、特定の化学物質、特に硫黄(S)化合物に対して非常に反応しやすく、接触すると容易に変色(ステイン)してしまいます。また、湿気や酸、アルカリなどの影響で酸化や腐食(緑青など)も起こしやすい、化学的にデリケートな金属です。

切削加工における影響

この特性は、切削油の選定において最も注意すべき点です。鉄鋼用の切削油に一般的に含まれている硫黄系の極圧(EP)添加剤は、銅や真鍮を黒く変色させてしまうため、原則として使用できません。また、pH値が高い(強アルカリ性の)水溶性切削油も、変色や腐食の原因となり得ます。

これらの特性が切削油の選定に与える影響

「潤滑性」と「非腐食性」の両立が絶対条件

上記の通り、銅・真鍮加工では、最大の課題である「凝着(溶着)」と「構成刃先」を抑制するために、極めて高い潤滑性能が切削油に求められます。しかし、その潤滑性能を高めるために、銅や真鍮を腐食させてしまうような添加剤を使うことはできません。したがって、「高い潤滑性」と「化学的な非腐食性・非汚染性」を高いレベルで両立させることが、銅・真鍮加工用切削油を選定する上での絶対的な前提条件となります。

2. 銅・真鍮加工に最適な切削油の選び方(非腐食性、低粘度)

銅・真鍮加工に最適な切削油の選び方(非腐食性、低粘度)
銅・真鍮加工に最適な切削油の選び方(非腐食性、低粘度)

銅・真鍮加工に最適な切削油選びの絶対条件は、化学的に適合し腐食させない「非腐食性(非鉄金属用)」であることです。その上で、最大の課題である凝着を抑制するために「優れた潤滑性」を持つ油剤を選び、粘りやすい切りくずを効率的に排出するために「低粘度」であることも重要な選定ポイントとなります。

銅・真鍮加工特有の課題を克服するためには、それに最適化された切削油を選定する必要があります。特に、鉄鋼用の切削油を安易に流用することは、深刻な品質問題を引き起こす可能性があるため注意が必要です。

化学反応を防ぐ「非腐食性(非鉄金属用)」切削油の推奨

なぜ専用品、あるいは適合品の確認が必要か

前述の通り、銅および真鍮は、硫黄(S)化合物に対して極めて反応しやすく、接触すると表面に硫化銅の黒い皮膜を形成し、著しく変色(ステイン)してしまいます。鉄鋼材料の重切削用に一般的に使用される切削油には、潤滑性能を高めるために活性硫黄系の極圧(EP)添加剤が配合されていることが多く、これを銅・真鍮加工に使用すると、製品が真っ黒になってしまうといった致命的なトラブルを引き起こします。

選定のポイント
  • 「銅非鉄金属対応」「非汚染性」の表示を確認
    切削油を選定する際は、必ず製品のカタログや仕様書で「銅・銅合金対応」「非鉄金属用」「非汚染性」といった表記があることを確認します。
  • 硫黄系極圧(EP)添加剤の種類に注意
    硫黄系のEP剤の中でも、比較的反応性の低い「不活性」タイプであれば、銅・真鍮への影響が少ない場合もありますが、それでも加工条件によっては変色のリスクがゼロではありません。最も安全なのは、硫黄系のEP剤を含まない切削油か、あるいは銅に対する腐食性を抑制する特殊な添加剤(銅不活性化剤)が配合されている製品を選ぶことです。
  • 水溶性切削油のpH値
    水溶性切削油の場合、pH値が高すぎる(強アルカリ性の)ものは、銅や真鍮を変色・腐食させる可能性があるため、pHが中性~弱アルカリ性の範囲に調整されている製品が推奨されます。

凝着を防ぐ「油性剤(潤滑性向上剤)」の有効性

なぜ油性剤が重要か

銅・真鍮加工最大の敵である「凝着(溶着)」と「構成刃先」を防ぐためには、工具とワークの間に強力な潤滑膜を形成し、金属同士の直接接触を断ち切る必要があります。この役割を担うのが「油性剤」です。

  • 油性剤の働き
    脂肪酸、エステル、動植物油脂といった油性剤は、その分子が金属表面に物理的に強く吸着する性質を持っています。これにより、極めて薄く、かつ強固な潤滑膜(物理吸着膜)を形成し、銅や真鍮が工具の刃先に付着するのを防ぎます。
  • 選定のポイント
    油性剤が効果的に配合された切削油を選ぶことで、切削抵抗の低減、構成刃先の抑制、バリの減少、そして美しい仕上げ面の実現が期待できます。サンワケミカルでは、銅・真鍮加工に特化した、非汚染性でありながら極めて高い潤滑性能を発揮する特殊な油性向上剤を配合した切削油を開発・提供しています。

切りくず排出性を高める「低粘度」切削油の選び方

なぜ低粘度が有利か

銅・真鍮加工で発生する切りくずは、軟らかく粘り気があるため、工具の溝(フルート)や加工領域内に付着・滞留しやすい性質があります。

  • 洗浄性の向上
    粘度が低い(サラサラした)切削油は、流動性が高いため、これらの粘りやすい切りくずを加工点から速やかに洗い流す「洗浄性」に優れています。
  • 浸透性の向上
    また、低粘度であることは、工具刃先の微細な部分まで油剤が浸透しやすくなるため、潤滑効果を高める上でも有利に働きます。
選定のポイント

一般的に、銅・真鍮加工には水溶性ではエマルジョンやソリュブルタイプ油性では低粘度タイプが、切りくず排出性の観点から推奨されます。ただし、潤滑性とのバランスを考慮し、加工内容に応じて最適な粘度を選定することが重要です。

銅・真鍮加工用の切削油選定は、まず化学的な安全性を確保し(非腐食性)、次に潤滑性を最大化して凝着を防ぎ、最後に低粘度で切りくずを効率的に管理するというプロセスで考えることが成功の鍵です。

3. 切削速度、送り速度に合わせた切削油の供給方法

切削速度、送り速度に合わせた切削油の供給方法
切削速度、送り速度に合わせた切削油の供給方法

銅・真鍮加工で切削油の効果を最大限に引き出す供給方法は、高速切削時には「高い冷却性」を、低速・仕上げ加工時には「高い潤滑性」を、それぞれ確実に加工点へ届けることにあります。そのために、十分な油量の供給と、加工現象に合わせたノズル位置の最適化が重要となります。

最適な切削油を選定しても、その供給方法が不適切では十分な効果は得られません。加工条件、特に切削速度や送り速度に合わせて、供給方法を最適化する工夫が必要です。

高速切削時の冷却効果を高めるための供給方法

なぜ冷却が重要か

銅・真鍮は熱伝導率が高いため、高速切削で発生した熱はワーク全体に素早く伝わります。これにより、ワーク全体が熱膨張し、精密な寸法を維持することが難しくなります。また、工具刃先も高温にさらされ、摩耗が促進されるだけでなく、熱による切りくずの溶着も起こりやすくなります。

供給のポイント
  • 十分な油量供給(フラッドクーラント)
    加工点およびその周辺に、大流量の切削油を途切れることなく供給し、発生した熱を強制的に奪い去ることが基本です。クーラントポンプの能力を最大限に活用し、十分な液量を確保します。
  • 適切なノズル位置の重要性
    ノズルは、工具の回転による遠心力やエアバリアに負けず、確実に工具の切れ刃とワークの接触点に切削油が到達するように配置します。複数のノズルを異なる角度から供給したり、シャワー状のノズルで広範囲をカバーしたりすることも有効です。特に、冷却性に優れる水溶性切削油(エマルジョン、ソリュブル)との組み合わせが効果的です。

低速送り・仕上げ加工時の潤滑不足を防ぐための工夫

なぜ潤滑が重要か

切削速度が低い領域や、送りが遅い仕上げ加工では、切りくずの生成速度が遅く、工具とワークが接触している時間が長くなるため、凝着や溶着、そして構成刃先がより発生しやすくなります。この領域では、冷却よりも潤滑が加工品質を決定づける最も重要な要素となります。

対策のポイント
  • 油性剤を含む切削油の有効性
    前述の通り、油性向上剤が効果的に配合された切削油を使用することで、低速域でも強固な潤滑膜を形成し、凝着を防ぎます。特に、潤滑性に優れたエマルションタイプの水溶性切削油や、油性切削油がこの領域で威力を発揮します。
  • 加工点への確実な供給
    油剤が確実に潤滑膜を形成できるよう、切りくずの流れを妨げないようにしつつ、切れ刃のすくい面と逃げ面の両方に油剤が行き渡るようにノズルを調整します。

銅・真鍮加工における切削油の供給戦略は、加工条件に応じて「冷却」と「潤滑」のどちらの役割をより重視するかを判断し、それに合わせて油量や供給位置を柔軟に調整することが重要です。

4. 銅・真鍮加工で起こりやすいトラブルと切削油による対策(バリ、面粗度不良)

銅・真鍮加工で起こりやすいトラブルと切削油による対策(バリ、面粗度不良)
銅・真鍮加工で起こりやすいトラブルと切削油による対策(バリ、面粗度不良)

銅・真鍮加工で頻発する「大きなバリ」と「面粗度不良」は、その根本原因の多くが「凝着」とそれに伴う「構成刃先」の発生にあります。したがって、これらのトラブルを解決する最も効果的な切削油活用術は、切れ味の良い工具を維持しつつ、優れた潤滑性を持つ油剤で凝着そのものを抑制することです。

銅・真鍮加工は、その材質特性から特有のトラブルが発生しやすいですが、その多くは切削油の選定と使い方を最適化することで改善・解決が可能です。

バリの発生を抑制するための対策

バリ発生のメカニズム

バリは、ワークの塑性変形によって加工部のエッジにめくれ上がるように発生します。特に銅や真鍮のような延性(粘り強さ)の高い材料では、工具の切れ味が鈍化(摩耗や構成刃先の付着)し、金属をきれいに「切削」するのではなく、無理やり「引きちぎる」ような状態になると、大きく、かつ除去しにくい強固なバリが発生しやすくなります。

切削油による対策提案
  • 切れ味の良い工具と高潤滑性切削油の組み合わせ
    バリ抑制の絶対的な基本は、常にシャープな切れ味の工具を使用することです。切削油は、工具の摩耗や構成刃先の付着を防ぐことで、この切れ味の維持に大きく貢献します。油性向上剤を効果的に配合した潤滑性の高い切削油を選定し、工具への凝着を防ぎます。
  • 供給方法の工夫
    工具の切れ刃、特に加工のエッジ部分(バリが発生しやすい箇所)に確実に切削油が供給されるようにノズルを調整します。これにより、エッジ部分での摩擦を低減し、金属の塑性変形を抑制して、バリの成長を抑えます。

面粗度不良(凝着による)を改善するための対策

面粗度不良のメカニズム

銅・真鍮加工における面粗度不良の最大の原因は、凝着と、それが進行して形成される構成刃先の生成・脱落です。工具の刃先に溶着・堆積した構成刃先が、加工中に不安定に剥がれ落ちる際、仕上げられたばかりの加工面をむしり取ったり、傷をつけたりします。これにより、加工面が白く曇ったようになったり、ざらついたり、深い引きずり傷が入ったりします。

切削油による対策提案
  • 油性剤を含む高潤滑性切削油の選定
    構成刃先の生成を抑制するためには、工具のすくい面と切りくずの間の摩擦を極限まで低減する必要があります。これを実現するのが、脂肪酸やエステルなどの油性向上剤です。これらの添加剤が金属表面に強力な潤滑膜を形成し、銅や真鍮の凝着を防ぎます。
  • 切削条件の最適化との連携
    切削油の性能と合わせて、切削速度や送り速度を最適化することも重要です。一般的に、構成刃先は特定の中低速域で発生しやすいため、その速度域を避ける(より高速にするなど)ことで、発生を抑制できる場合があります。その際、高速化による発熱に対応できる冷却性の高い切削油(例:潤滑型ソリュブル)が必要となります。

銅・真鍮加工におけるバリや面粗度不良のトラブルシューティングは、すなわち「凝着との戦い」です。切れ味の良い工具と、それを支えるための高潤滑性切削油の選定が、最も確実で効果的な解決策となります。

5. 加工後の変色・腐食を防ぐための切削油管理

加工後の変色・腐食を防ぐための切削油管理
加工後の変色・腐食を防ぐための切削油管理

銅や真鍮は、見た目の美しさとは裏腹に化学的にデリケートな金属であり、特に水や特定の化学物質が存在する環境下では酸化や腐食(変色、シミ、緑青など)を起こしやすい性質があります。この問題を防ぐためには、銅合金に対して不活性な適切な防錆剤を含む切削油を選定し、特に水溶性切削油の場合はpH管理を徹底すること、そして加工後の適切な洗浄・防錆処理を行うことが極めて重要です。

「加工直後はきれいだったのに、しばらく保管していたら製品の表面に黒や茶色のシミができてしまった」といったトラブルは、切削油の化学的な適合性や、加工後の管理が不適切な場合に発生します。

銅や真鍮が酸化・腐食しやすい性質と防錆剤の重要性

なぜ変色・腐食するのか

銅および銅合金は、空気中の酸素、水分、そして特定の化学物質、特に硫黄(S)化合物に対して非常に反応しやすい性質を持っています。

  • 酸化による変色
    空気中の酸素と反応し、表面に酸化銅の皮膜を形成して、徐々に赤褐色から黒っぽい色に変色していきます。
  • 硫黄化合物による変色(ステイン)
    切削油に含まれる活性硫黄系の極圧添加剤や、空気中の硫黄酸化物などと反応すると、表面に硫化銅の黒い皮膜を形成し、著しく変色します。
  • 腐食(緑青など)
    水分、二酸化炭素、酸などが存在すると、緑青(ろくしょう)と呼ばれる青緑色の錆が発生することがあります。
防錆剤を含む切削油の選定

これらの変色や腐食を防ぐため、銅・真鍮加工用の切削油には、これらの金属表面に安定した保護膜を形成する、非鉄金属専用の特殊な防錆剤(腐食抑制剤、銅不活性化剤など)が配合されている必要があります。「銅非鉄金属対応」と明記され、かつ十分な防錆性能を持つ製品を選ぶことが、トラブルを未然に防ぐための第一歩です。

切削油のpH管理の重要性

なぜpH管理が必要か

特に水溶性切削油を使用する場合、そのpH値の管理は銅・真鍮の変色・腐食防止に直結します。

  • 高すぎるpHのリスク
    pHが高すぎる(強アルカリ性の)液は、銅や真鍮を変色させたり、亜鉛が選択的に溶出(脱亜鉛腐食)したりする原因となることがあります。
  • 低すぎるpHのリスク
    pHが酸性側に傾くと、腐食が促進されます。また、pHが低下すると、微生物が繁殖しやすくなり、その代謝物が腐食の原因となることもあります。
  • 管理のポイント
    銅・真鍮加工用の水溶性切削油は、一般的にpH8.0~9.5程度の中性~弱アルカリ性の範囲で管理することが推奨されます。定期的にpHを測定し、この範囲を逸脱しないように管理することが重要です。

加工後の適切な洗浄・防錆処理

切削油が加工後のワーク表面に長時間付着したままだと、空気中の湿気や汚染物質などと反応し、シミや腐食の原因となることがあります。

  • 洗浄
    加工後は、できるだけ速やかに、ワークに適した中性タイプの洗浄剤などで切削油や汚れを完全に洗い流します。
  • 防錆
    洗浄後、特に長期間保管する場合や、湿度の高い環境に置かれる場合は、必要に応じて水置換性を有する短期~長期の防錆油を塗布し、表面を保護します。

銅・真鍮の美しい輝きと品質を維持するためには、加工中の切削油選定だけでなく、加工後のケアにも細心の注意を払うことが重要です。サンワケミカルでは、銅・真鍮加工に最適な非汚染性の切削油はもちろん、加工後の工程で使用する洗浄剤や防錆油についても、トータルでご提案が可能です。

まとめ

本記事では、電気・電子部品から装飾品まで、幅広い分野で使用される銅や真鍮の切削加工において、その品質と効率を最大限に高めるための、最適な切削油の選び方と使用上の重要なポイントについて、多角的な視点から詳しく解説してまいりました。

銅・真鍮加工を成功に導くための切削油活用のポイントは、

  • 材質特有の「高い凝着性(溶着しやすさ)」を、優れた潤滑性を持つ油剤で抑制すること。
  • 化学的にデリケートな銅・真鍮を変色や腐食から守るため、「非汚染性・非腐食性」の専用油剤を選び、pH管理を徹底すること。
  • 粘りやすい切りくずをスムーズに排出するため、「低粘度」で洗浄性に優れた油剤を選ぶこと。
  • バリや面粗度不良といったトラブルの根本原因である「構成刃先」の発生を、高潤滑性油剤で防ぐこと。 に集約されます。

これらのポイントを押さえた適切な切削油の選定と、それを支える日々のきめ細やかな管理、そして加工後の適切なケアを実践することで、銅・真鍮加工特有の課題を克服し、高品質で安定した生産を実現することが可能となります。

もし、現在ご使用の切削油での銅・真鍮加工に課題を感じておられる、あるいは、より高度な品質要求やコストダウンを目指しておられるのであれば、ぜひ一度、私たちサンワケミカル株式会社にご相談ください。長年の経験と豊富な知見に基づき、お客様の具体的な加工条件や材質、そしてお悩みに最適な切削油のご提案と、その効果を最大限に引き出すためのトータルなサポートを提供させていただきます。


サンワケミカル株式会社は、長年の経験と技術に基づき、多種多様な切削油剤を開発・製造しております。お客様の加工条件やニーズに合わせた最適な製品をご提案いたしますので、切削油に関するご相談は、ぜひお気軽にお問い合わせください。

もし、この記事で紹介した対策を試しても問題が解決しない場合や、お使いの切削油に関するより詳細な情報、お客様の特定の加工に最適な油剤の選定についてご相談がありましたら、どうぞお気軽に私たちサンワケミカル株式会社までお問い合わせください。経験豊富な専門スタッフが、お客様の状況を詳しくお伺いし、最適なソリューションをご提案いたします。

サンワケミカル株式会社HP:http://sanwachemical.co.jp/
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今後も、金属加工の現場で役立つ情報を発信してまいりますので、サンワケミカル株式会社公式ブログにご期待ください。

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サンワケミカル株式会社 鳥居省吾
サンワケミカル株式会社 鳥居省吾
副社長
金属加工油剤の営業一筋21年。常に「お客様の立場」を第一に考え、課題解決に誠実に取り組むことで、多くの企業様と長い信頼関係を築いてまいりました。「信頼の輪が大きな幸せを生む」という経営理念のもと、今後もお取引先様の発展と働く方々のお役に立てるよう努めてまいります。 趣味はサッカー。プレミアリーグを現地で観戦したい。
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