【鉄鋼材料の切削油選び】材質別最適化ガイドと成功事例

【鉄鋼材料の切削油選び】材質別最適化ガイドと成功事例
SS400のような一般構造用鋼から、S45Cといった機械構造用炭素鋼、SCM材に代表される合金鋼、そしてSUS304などの難削材であるステンレス鋼まで、「鉄鋼材料」は、その種類の豊富さと優れた機械的性質から、金属加工において最も広く、かつ大量に使用される材料です。しかし、その多様さゆえに、多くの現場担当者が切削油の選定に頭を悩ませています。「鉄だから、どれも同じようなものだろう」「とりあえず今使っている油剤で…」といった画一的な切削油選びが、実は工具寿命の低下、加工品質のばらつき、そして不要なコスト増といった問題の根源となっているケースは少なくありません。
この記事では、多種多様な鉄鋼材料の加工において、その性能を最大限に引き出し、品質と効率を飛躍的に向上させるための「切削油の最適化」に徹底的に焦点を当てます。代表的な鉄鋼材料である「炭素鋼」「合金鋼」「ステンレス鋼」それぞれの切削加工における特性を深く理解し、それに合わせた最適な切削油の選び方を具体的に解説。さらに、切削油の最適化がもたらす工具寿命の向上やコスト削減の成功事例まで、網羅的にご紹介いたします。自社の加工に最適な「最適解」を見つけ出し、鉄鋼加工のレベルを一段階引き上げるための一助となれば幸いです。
1. 鉄鋼材料の種類と切削加工の特性

鉄鋼材料の切削油選定は、「炭素量」「添加元素」「熱処理」によって大きく変わる材質特性を理解することから始まります。硬度、靭性、熱伝導性、加工硬化性といった特性の違いが、切削油に求められる潤滑性、冷却性、極圧性の最適なバランスを決定づけます。
一口に「鉄」と言っても、その種類は多岐にわたり、それぞれが異なる切削加工特性を持っています。適切な切削油を選ぶためには、まず加工する相手(被削材)の性格をよく知ることが重要です。ここでは、代表的な鉄鋼材料の分類と、それぞれの加工における特徴を解説します。
炭素鋼(SS材、S-C材など)
材質と切削特性
炭素の含有量によって機械的性質が変わる鉄鋼で、機械加工で最も一般的に使用される材料の一つです。
- 低炭素鋼(SS400、S25Cなど): 柔らかく粘り強い(延性が高い)ため、切削抵抗は低いものの、切りくずが長く繋がったり、工具に溶着して構成刃先が発生しやすかったりします。
- 中炭素鋼(S45C、S55Cなど): 熱処理(焼入れ・焼き戻し)によって硬度を高めることができ、機械部品に広く使われます。硬度が高くなるほど切削抵抗は増大しますが、切りくずの処理性は比較的良好になります。
- 高炭素鋼(SK材など): 工具鋼などに使われる非常に硬い材料で、切削には高い工具性能と、工具刃先を保護する強力な潤滑性が求められます。
合金鋼(SCM、SNCM、SKDなど)
材質と切削特性
炭素鋼に、ニッケル(Ni)、クロム(Cr)、モリブデン(Mo)といった特殊な元素を添加することで、強度、靭性、耐熱性などを向上させた鉄鋼です。
- 特性
熱処理によって極めて高い硬度と強度を持つため、切削抵抗が非常に大きくなります。工具刃先には大きな負荷と高い熱が発生するため、工具の摩耗が進行しやすく、チッピング(微小欠損)のリスクも高まります。 - 切削時の課題
高い硬度と強度に打ち勝つための、極めて高い潤滑性能と、工具刃先を保護する極圧性が切削油に求められます。
ステンレス鋼(SUS304、SUS316、SUS420など)
材質と切削特性
クロム(Cr)やニッケル(Ni)を多く含み、優れた耐食性を持つ合金鋼です。代表的な難削材の一つとして知られています。
- 特性
- 加工硬化性が極めて高い
一度加工された部分が著しく硬化するため、次の切削で工具への負荷が急増します。 - 熱伝導率が低い
切削熱がワークや切りくずに拡散しにくく、工具の切れ刃に熱が集中・蓄積しやすいです。 - 靭性が高く粘り強い
切りくずが長く連続しやすく、工具に溶着しやすいです。
- 加工硬化性が極めて高い
- 切削時の課題
これら三重苦の特性により、工具の摩耗、溶着、構成刃先の生成が激しく、加工が非常に困難です。切削油には、高い潤滑性・極圧性と、切れ刃に集中する熱を効果的に除去する高い冷却性という、相反する性能を高いレベルで両立させることが求められます。
このように、同じ「鉄」をベースとした材料でも、炭素鋼、合金鋼、ステンレス鋼では切削時の挙動が全く異なります。この違いを無視した画一的な切削油の選定が、多くの加工トラブルの根源となっているのです。
2. 炭素鋼、合金鋼、ステンレス鋼別 おすすめ切削油

材質別の切削油選びの基本は、炭素鋼には「バランス型」、合金鋼には「高潤滑・高極圧型」、そしてステンレス鋼には「冷却性を兼ね備えた高潤滑・高極圧・非塩素型」の油剤を選定することです。それぞれの材質特有の課題(構成刃先、高硬度、加工硬化など)に、最適な添加剤で対応します。
前項で解説した各鉄鋼材料の特性を踏まえ、それぞれに推奨される切削油のタイプ、粘度、そして重要な添加剤について、具体的な選定ポイントを解説します。
炭素鋼(SS400, S45Cなど)向け切削油
一般的な課題
低炭素鋼では「構成刃先の生成」と「切りくず処理」、中~高炭素鋼では「工具摩耗の抑制」が主な課題となります。
推奨される切削油タイプ
- 水溶性切削油(推奨)
汎用性が高く、冷却性と潤滑性のバランスに優れるエマルション型が最も広く使用されます。高速加工や切りくず排出性を重視する場合は、ソリュブル型も有効です。 - 油性切削油
ねじ切りやブローチ加工など、特に高い潤滑性が求められる加工では、油性切削油が使用されます。
推奨される添加剤と選定ポイント
- 油性向上剤
構成刃先の生成を抑制し、仕上げ面を向上させるために効果的です。 - 防錆剤
鉄鋼材料の加工では、優れた防錆性は不可欠です。 - 極圧(EP)添加剤
S45C以上の硬い材料を加工する場合は、工具摩耗を抑制するために、マイルドな極圧添加剤が配合されたものが推奨されます。
合金鋼(SCM435, SKD11など)向け切削油
一般的な課題
高い硬度と強度を持つため、「切削抵抗の増大」と、それに伴う「工具の摩耗・チッピング」が最大の課題です。
推奨される切削油タイプ
- 油性切削油
高い負荷がかかる加工が多いため、潤滑性と極圧性に最も優れる油性切削油が、工具保護の観点から推奨されるケースが多くあります。 - 水溶性切削油
マシニングセンタなどでの汎用性を考慮する場合は、鉱物油含有率が高く、極圧添加剤を強力に配合した高潤滑・高極圧タイプのエマルション型が適しています。
推奨される添加剤と選定ポイント
- 極圧(EP)添加剤(必須級)
高い負荷に耐え、工具刃先の溶着や焼付きを防ぐため、硫黄系やリン系などの強力な極圧添加剤の配合が不可欠です。 - 油性向上剤
摩擦係数を低減し、切削トルクを安定させるために重要です。 - 粘度の選定
一般的に、切削抵抗が大きい重切削では、強固な油膜を形成できる中~高粘度の油剤が有利です。
ステンレス鋼(SUS304, SUS316など)向け切削油
一般的な課題
「加工硬化」「低い熱伝導率」「高い凝着性」という三重苦に対応する必要があります。工具摩耗、構成刃先、仕上げ面不良が頻発します。
推奨される切削油タイプ
- 油性切削油
潤滑性を最優先する場合、特に低速での加工では、塩素フリーで、かつ硫黄系などの極圧添加剤と油性向上剤をバランス良く配合した、ステンレス加工専用の油性切削油が推奨されます。 - 水溶性切削油
高速加工などで冷却性を重視する場合は、潤滑性と冷却性を高いレベルで両立させた、特殊な添加剤配合のエマルション型やソリュブル型が適しています。
推奨される添加剤と選定ポイント
- 塩素フリーの極圧(EP)添加剤
ステンレス鋼は、塩素イオンによって応力腐食割れを起こすリスクがあるため、近年では環境規制の観点からも塩素フリーであることが重要視されます。硫黄系やリン系、あるいは新規の特殊な極圧添加剤が用いられます。 - 油性向上剤
工具への溶着を防ぎ、加工硬化を抑制するために非常に重要です。 - 冷却性能
低い熱伝導率を補い、工具刃先に熱がこもるのを防ぐため、水溶性を選ぶ場合は特に冷却性が高いことが求められます。
まとめると、炭素鋼には汎用性の高い油剤が適用できる一方、合金鋼やステンレス鋼には、その高い硬度や粘り、加工硬化性に対応できる、より高性能な添加剤が配合された専用性の高い切削油が必要不可欠となります。サンワケミカルでは、これら各種鉄鋼材料に最適化された高性能な切削油を幅広くラインナップしており、お客様の課題解決をサポートします。
3. 鉄鋼材料の加工におけるトラブルと切削油対策

鉄鋼材料加工で頻発するトラブル、特に「構成刃先」と「工具摩耗」の二大課題は、切削油の「潤滑性」と「極圧性」を最適化することで大幅に改善できます。適切な油剤の選定と、それを確実に加工点へ届ける供給方法が、トラブル解決の鍵となります。
鉄鋼材料の加工では、その多様な特性ゆえに、様々なトラブルが発生します。ここでは、代表的なトラブルの原因と、切削油の観点からの具体的な対策を解説します。
構成刃先の発生と対策
現象と原因
特に低~中炭素鋼のような柔らかく粘り強い材料を、中低速域で切削する際に、切りくずの一部が熱と圧力で工具の刃先に溶着・堆積する現象です。この構成刃先は不安定で、成長と脱落を繰り返す際に加工面をむしり取り、面粗度を著しく悪化させます。主な原因は潤滑不足による高い摩擦です。
切削油からの対策
- 潤滑性の高い油剤の選定
油性向上剤(エステル、脂肪酸など)を配合した切削油を使用し、工具すくい面と切りくずの間の摩擦を低減します。 - 極圧(EP)添加剤の活用
刃先と切りくずの溶着を化学的に防ぎます。 - 水溶性の場合は濃度を高めに管理
潤滑成分の有効濃度を高めます。 - 切削速度の調整
構成刃先が発生しやすい速度域を避ける(より低速、またはより高速へ)ことも有効です。
工具摩耗(特にクレータ摩耗、フランク摩耗)と対策
現象と原因
- クレータ摩耗
工具すくい面が、高温の切りくずとの化学反応や拡散によってえぐれるように摩耗する現象。主に熱が原因です。 - フランク摩耗
工具逃げ面が、加工済み面との摩擦によって摩耗する現象。主に機械的な摩擦が原因です。
切削油からの対策
- 冷却性の向上(対クレータ摩耗)
冷却性に優れた水溶性切削油(ソリュブル型、シンセティック型)を使用し、十分な量を供給して刃先温度を下げます。 - 潤滑性・極圧性の向上(対フランク摩耗)
潤滑性に優れた油性切削油や、極圧添加剤入りの水溶性切削油を使用し、摩擦を低減します。 - 総合的な対策
冷却性と潤滑性を高いレベルで両立させた油剤を選定することが、両方の摩耗を抑制する上で重要です。
溶着・むしれと対策
現象と原因
潤滑不足により、工具とワーク、あるいは工具と切りくずが直接接触し、金属同士がくっついてしまう(溶着)現象です。これにより、加工面が引き裂かれるように荒れる「むしれ」が発生します。
切削油からの対策
- 潤滑性・極圧性の高い油剤の選定
構成刃先対策と同様に、強力な潤滑膜・極圧膜を形成できる油剤が不可欠です。特にステンレス鋼のような凝着しやすい材料では、専用の高性能油剤が効果を発揮します。 - 適切な供給
加工点に油剤が確実に供給され、油膜切れが起きないようにします。
バリの発生と対策
現象と原因
加工部のエッジに、塑性変形によって取り残された不要な突起(バリ)が発生する現象。工具の切れ味が低下(摩耗)している場合や、潤滑が不十分で切削性が悪い場合に発生しやすくなります。
切削油からの対策
- 工具摩耗を抑制する
上記の工具摩耗対策を徹底し、常に切れ味の良い状態で加工できるようにします。 - 潤滑性を高める
切削抵抗を低減し、金属がスムーズにせん断されるように促すことで、バリの発生を抑制します。
加工硬化と対策
現象と原因
特にステンレス鋼(SUS304など)で顕著な現象で、一度切削された表面層が、加工のストレスによって元の状態よりも著しく硬化してしまうことです。この硬化した層を次に切削する際に、工具に極めて大きな負荷がかかり、摩耗が急激に進行します。
切削油からの対策
- 潤滑性を最大限に高める
切削抵抗と摩擦熱を極限まで低減し、加工変質層の生成をできる限り抑制します。塩素フリーで高性能な極圧添加剤を配合した、ステンレス加工専用油剤の使用が強く推奨されます。 - 冷却性を確保する
切れ刃に集中する熱を効果的に除去し、熱による変質を抑えます。
鉄鋼材料加工におけるトラブルの多くは、工具刃先で起こる摩擦と熱に起因します。潤滑性と極圧性に優れた切削油を選び、適切に供給することで、これらの根本原因にアプローチし、安定した加工を実現できるのです。
4. 切削油の最適化による工具寿命向上とコスト削減事例
切削油の最適化は、工具寿命を2倍、3倍に延ばすことも可能な、極めて費用対効果の高いコスト削減策です。工具費の直接的な削減に加え、交換頻度の減少による機械稼働率の向上や、不良率の低減といった間接的なメリットが、工場全体の収益性を大きく改善します。
「たかが切削油」と考えるか、「コスト削減の宝の山」と考えるか。その視点の違いが、工場の収益性に大きな差を生み出します。ここでは、適切な切削油を選定・管理することによって、実際にどのようなコストメリットが生まれるのか、具体的な事例を交えて解説します。
事例1:炭素鋼(S45C)部品の量産加工における工具費削減
課題
ある自動車部品メーカーでは、マシニングセンタでS45C製の部品を量産していましたが、超硬ドリルの摩耗が早く、1日に数回の工具交換が必要でした。使用していたのは、安価な汎用のエマルション型水溶性切削油でした。工具費の増大と、工具交換によるダウンタイムが問題となっていました。
対策と結果
サンワケミカルの技術者が状況を分析し、ドリルの摩耗形態から潤滑不足が主な原因であると判断。そこで、潤滑性と極圧性を強化したエマルションタイプの切削油「弊社水溶性スーパークール」への変更を提案しました。初期の油剤コストは従来品より約20%上昇しましたが、テスト導入したところ、ドリルの寿命が約2.5倍に延長。1日あたりの工具交換回数が激減し、年間の工具購入費用を30%以上削減することに成功しました。さらに、ダウンタイムが減ったことで、生産量も向上するという副次的な効果も得られました。
事例2:ステンレス鋼(SUS304)の旋削加工における生産性向上
課題
ある医療機器部品メーカーでは、SUS304の精密旋削加工において、加工硬化による工具のチッピングと、仕上げ面粗度の悪化に悩まされていました。安定した品質を確保するために切削速度を上げられず、生産性が伸び悩んでいました。
対策と結果
使用していた塩素系添加剤を含む油性切削油から、作業環境と性能の両立を目指し、塩素フリーで特殊な合成油性向上剤と極圧添加剤を配合した、水溶性の「弊社水溶性スーパークール」への切り替えを提案。水溶性への変更に当初は不安があったものの、テスト加工を実施。結果、優れた潤滑性と冷却性のバランスにより加工硬化が抑制され、工具寿命が向上したのはもちろん、切削速度を15%アップしても安定した仕上げ面粗度を維持できることが判明。これにより、サイクルタイムが大幅に短縮され、生産性が飛躍的に向上。塩素フリー化による環境改善も実現しました。
切削油の最適化がもたらすコストメリットの内訳
直接的なコスト削減
- 工具費の削減
工具寿命の延長による。 - 切削油購入費の削減
油剤の長寿命化や、適正な濃度管理による。 - 廃液処理費の削減
交換頻度の減少による。
間接的なコスト削減(生産性向上)
- 加工時間(サイクルタイム)の短縮
より高速・高能率な切削条件の設定が可能になる。 - 機械稼働率の向上
工具交換やトラブル対応によるダウンタイムが減少する。 - 不良率の低減
加工品質が安定し、手直しや廃棄のコストが削減される。 - 人件費の削減
工具交換やトラブル対応にかかる工数が削減される。
これらの事例が示すように、切削油への投資は、単なる消耗品費ではなく、工具費、人件費、そして機会損失といった、より大きなコストを削減するための戦略的な投資です。自社の加工に最適な切削油を見直すことは、大きな利益改善の第一歩となり得ます。
5. 最新の鉄鋼材料向け高性能切削油の紹介

最新の鉄鋼材料向け切削油は、MQLやドライ加工といった環境負荷低減技術への対応と、より高硬度な難削材や複雑な加工に対応するための「超高潤滑・高極圧性能」という二つの方向に進化しています。これにより、生産性の向上とサステナビリティ(持続可能性)の両立が可能になります。
切削加工技術の進化とともに、切削油もまた日々進化を続けています。ここでは、近年の鉄鋼材料向け高性能切削油のトレンドと、その特長について紹介します。
高硬度材・難削材向け高性能切削油
技術トレンド
焼入れ後の高硬度鋼(HRC60以上)の切削や、ステンレス鋼、特殊合金鋼といった難削材の高能率加工のニーズに応えるため、切削油の潤滑性・極圧性はますます高度化しています。
- 新規極圧添加剤の開発
従来の硫黄系、リン系、塩素系に代わる、あるいはそれらを補完する、より高い温度で効果を発揮し、かつ環境負荷の少ない新しいタイプの極圧添加剤(例:特殊なボロン化合物、有機金属化合物など)の開発が進んでいます。 - ベースオイルの高性能化
鉱物油の中でも高度に精製されたものや、化学構造を精密に設計した合成油(エステル、PAOなど)をベースオイルとして使用することで、優れた耐熱性、酸化安定性、そして潤滑性を実現しています。 - 相乗効果の追求
これらの高性能ベースオイルと新規添加剤を、サンワケミカル独自の配合技術によって最適に組み合わせることで、従来品を凌駕する性能を発揮する製品が生まれています。
適用事例
- 高硬度金型材の直彫り加工での工具寿命延長
- ステンレス鋼の重切削における加工能率の大幅向上
- 特殊合金鋼の深穴加工におけるトラブル防止
環境負荷低減に配慮した鉄鋼材料向け切削油
技術トレンド
世界的な環境規制の強化や、企業のSDGsへの取り組みを背景に、環境負荷の少ない切削油への需要が急速に高まっています。
- 塩素フリー化
塩素系極圧添加剤は、優れた性能を持つ一方で、焼却時にダイオキシンを生成するリスクが指摘されており、その使用は世界的に削減される傾向にあります。これに代わる、塩素フリーでありながら同等以上の性能を発揮する切削油が主流となっています。 - 低ミスト・低VOC
作業者の健康と安全に配慮し、オイルミストの発生を抑制した油剤や、揮発性有機化合物(VOC)の含有量が少ない油剤の開発が進んでいます。 - MQL(最小量潤滑)油剤
油剤の使用量を極限まで削減するMQL加工法に対応した、植物油ベースなどの生分解性に優れた専用油剤も、鉄鋼材料の軽切削を中心に適用が拡大しています。 - PRTR法非該当
PRTR法(化学物質排出移動量届出制度)の届出対象となるような特定の化学物質を含まない、より安全性の高い製品へのシフトが進んでいます。
サンワケミカルでは、これらの最新技術トレンドを常に取り入れ、高い加工性能と、環境・安全性能を両立させた、次世代の鉄鋼材料向け切削油の研究開発に力を注いでいます。
切削油技術は、より困難な加工への挑戦と、地球環境への配慮という二つの社会的要請に応える形で日々進化しています。最新の油剤技術を積極的に活用することが、将来にわたる競争力の源泉となります。
まとめ
本記事では、金属加工の現場で最も広く使用される「鉄鋼材料」の切削加工において、その品質と効率を最大限に高めるための最適な切削油の選び方と活用法を、材質(炭素鋼、合金鋼、ステンレス鋼)別の特性を踏まえながら、網羅的に解説してまいりました。
鉄鋼材料と一括りにせず、それぞれの材質が持つ切削特性(硬度、靭性、加工硬化性など)を深く理解し、それに合わせて、
- 切削油のタイプ(油性・水溶性)と、求められる性能(潤滑性、冷却性、極圧性など)
- 性能を決定づける添加剤の種類 を戦略的に選定することが、加工トラブルを未然に防ぎ、工具寿命を延ばし、そして最終的な製品品質を高めるための「最適解」であるとご理解いただけたかと思います。
また、具体的な成功事例を通じて、切削油の最適化が、単に技術的な課題を解決するだけでなく、工具費や加工時間、不良率の削減といった、直接的・間接的なコストダウンに大きく貢献することも示しました。さらに、最新の高性能油剤や環境配慮型油剤の動向を知ることは、将来の競争力強化と持続可能な生産活動に繋がります。
もし、現在ご使用の切削油が、お使いの鉄鋼材料や加工条件に対して本当に最適なのか、少しでも疑問や課題をお持ちでしたら、ぜひ一度、私たちサンワケミカル株式会社にご相談ください。長年の経験と豊富な製品知識、そして専門的な分析技術に基づき、お客様の状況に最適な切削油のご提案から、その効果を最大限に引き出すための管理・運用方法のアドバイスまで、トータルでサポートさせていただきます。
サンワケミカル株式会社は、長年の経験と技術に基づき、多種多様な切削油剤を開発・製造しております。お客様の加工条件やニーズに合わせた最適な製品をご提案いたしますので、切削油に関するご相談は、ぜひお気軽にお問い合わせください。
もし、この記事で紹介した対策を試しても問題が解決しない場合や、お使いの切削油に関するより詳細な情報、お客様の特定の加工に最適な油剤の選定についてご相談がありましたら、どうぞお気軽に私たちサンワケミカル株式会社までお問い合わせください。経験豊富な専門スタッフが、お客様の状況を詳しくお伺いし、最適なソリューションをご提案いたします。
サンワケミカル株式会社HP:http://sanwachemical.co.jp/
サンワケミカル株式会社お問い合わせ:http://sanwachemical.co.jp/contact/
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今後も、金属加工の現場で役立つ情報を発信してまいりますので、サンワケミカル株式会社公式ブログにご期待ください。